2015(平成27)年3月 

※ PTA特集の第八弾は、卒業式の会長挨拶です(今年で二度目)。スポ少の時からよく知っている、息子のチームメイトも、立派に成長して卒業します。先生方がよく鍛えて下さり、また彼ら彼女らもよく応えてきたからこそだと思います。近頃は、弱さを受け容れることと、自虐の違いがわからない人が増えました。このままでは、素直に「ごめんなさい」が言えない子どもが育ちます。そんな危機感を込めて話しました。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

三隅中での三年間の学びを終え、たくましく成長された卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。そして、御家族の皆さま、本当におめでとうございます。また、ご指導して下さった先生方、見守って下さった地域の皆さま、有り難うございました。親師会を代表して、祝辞を述べさせていただきます。

 

何年か前、ある有名なジャーナリストの講演が、ルネッサ長門でありました。その内容が、長門時事に掲載されていたのですが、その方は、こう言われたそうです。
「これから日本は大変なことになる。景気は悪い。TPPの問題もある。北朝鮮もいるし、韓国、中国とは仲が悪い。アメリカは当てにならない。これから日本はもっともっと強くならなくてはいけない。一人ひとりが、自立して強さを求めていかなくてはならない。」と。
 強さ、自立。よく聞く言葉ですが、私はそれを読みながら、何か違うのではないかと思ったのです。

 なぜなら、人間がどんなに強くなったとしても、大自然の前ではほんのちっぽけな存在でしかなかったということは、私たちはあの四年前の三月十一日、東日本大震災で思い知らされたのではなかったでしょうか。
 人間は弱い。人間はちっぽけだ。だからこそ、助け合わなくてはならない。支え合わなければならない。そのことを思い知らされたからこそ、震災直後に「絆」という言葉が叫ばれたのでしょう。そこにこそ、「有難う」「お互いさま」といった、心豊かな言葉も生まれてくるのではないですか。

何より、強さや自立を追い求めて、どんな世の中になったのでしょう。
 先日、こんな話を聞きました。あるお婆ちゃんが、都会に住んでいる息子さんのお嫁さんから、こう言われたそうです。
「ばあちゃん、私たちは子どもの世話になるつもりはありませんから・・・・、あなたのお世話もいたしません。」
私はこの話を聞いて、ゾッとしました。

「私は人に迷惑をかけていない。だから、誰からも迷惑をかけられたくない。」
そう言って親を切り捨てる。怖ろしいと思いませんか。
「私は迷惑をかけていない。だから、迷惑をかけられたくない。」
これは自立ではありません。孤立です。でも、まさしく今の時代は、こんな感覚が広がっているのではないですか。


 第一、「お前は本当に、今まで人に迷惑をかけてないとでも、思っているのか」という話でしょう。みんな知らず知らずに、迷惑をかけて、心配をかけて、許されて、ここまで育てられてきたんです。それは、私もそう。みんなそうでしょう。
 確かに、今は便利になって、お金さえ出せばいろんなサービスを受けられるようになりました。でも、そのシステムを作ったのは、誰ですか。あなた一人が、この世の中を作ってきたわけではないのです。自立といっても、支えてくれる地面がなかったら、立てないのです。

 

今、少年ジャンプに『ワンピース』という漫画がありますね。その主人公ルフィが、こんなことを言っています。
「俺は、○○ができねぇ。△△もできねぇ。俺は、人の世話にならねぇと、生きていけねぇ自信がある!」
これは、わがままな言葉ではありません。これは、感謝の言葉です。
「私には、できないことがある。あなたがいてくれることで、私は生かさせてもらっている。あなたがいてくれて、うれしい。ありがとう。」
こんな言葉を言われたら、どうですか。シビれますよ。私は、必要とされている。私は、求められている。私はここにいていいんだと思える。

 逆に、「アンタがいなくても、オレは生きていけるし。関係ないし。」と言われたら、どうですか。ガッカリします。
 そう考えると、「有難う」という言葉は、人を活かしていく言葉なんです。

 そして、「有難う」とお礼を言うには、自分の弱さを受け容れなくては言えません。
 自分にはできないことがある。人に迷惑をかけなくては生きてはいけない。そんな自分の弱さを知るからこそ、心から感謝できる。「お互いさま」と人を思いやり、優しくなれる。そして、弱さを受け容れるからこそ、私たちは繋がりあえるのです。

 弱さを受け容れられない人ほど、強がります。自分を大きく見せようとする。素直にごめんなさいが言えないし、人に責任を押し付ける。損得ばかりを考えて、大切なことがわからなくなる。

私は皆さんに、弱さを大切にする人間になって欲しいと思うのです。強く明るく、人をいじめ、傷つける人間になるよりも、どうか弱さを通して、感謝できる、人を思いやれる人間になって下さい。

 
卒業生の御家族の皆さま。本日は、おめでとうございます。成長した卒業生の姿に、家族の願い、そして先生方の思いの深さが、あらわれているように思えます。本当にお喜びのことでしょう。おめでとうございます。

  
最後に、卒業生の皆さんへもう一言だけ。
あなたがいたからこそ、家族の人たちも、先生方も、心配したり、喜んだり、ハラハラしたり、そして感動できたのです。あなたがいてくれたおかげです。それほど、あなたたちは一人ひとりが掛け替えのない、尊い存在なのです。そのことを、どうか忘れないでください。

 

卒業生の皆さんに、心からの祝福を贈り、祝辞とさせていただきます。ご卒業、本当におめでとうございます。■