2011(平成23)年7月 山口新聞『東流西流』 
 
 

「都会には自然がない」とよく言われます。しかし、解剖学者の養老猛司さんは自然がないとは単に植物がないことではなく、人間にとって自然なことであるはずの「生老病死」、特に「死」がないことだと言われています。考えてみれば、死ぬことは人間にとって自然なことですが、私たちは「死」を不自然なこととして、生活から遠ざけてしまいました。


 以前、ある製薬会社が、二十代から六十代の男女千人を対象に『いのちの大切さに関する意識調査』をインターネット上にて実施し、その中に「あなたがあと一カ月で人生を終えるとしたら何をする」という質問がありました。皆さんなら何をしますか?最後だからと、自分が楽しむための時間にする意見が多いと思いきや、一位はなんと「親孝行をする」。二位は「お世話になった人に恩返しをする」。三位、四位は「世界を旅行」「食べたいものを食べる」が入りましたが、五位は「疎遠になった友人に会う」、六位が「社会貢献活動をする」と、人とのつながりを意識させる答えが数多くありました。


 つまり、私たちは「死」を意識することで初めて、人生にとって何が一番大切なのかを考えさせられるのでしょう。「死」を見つめるとは、実は「生」を見つめることなのです。現代とは、「死」という自然なことから目を逸らしたことで、「生きる」ことが見えなくなった時代だといえるでしょう。