2011(平成23)年8月山口新聞『東流西流』

 山口新聞『東流西流』に掲載された第七回目です。 







住職という立場は、年配の方との接点が多くなります。その中で気になるのが「年をとったら、つまらんねぇ。」という言葉です。確かに、若い頃と比べて不便なこと、思い通りにならないことも多いでしょう。私などにはわからないご苦労もあることでしょう。でも私は「そんなこと、言わないでください。」とお願いするのです。なぜなら、「そんなことを言われたら、僕たちが安心して年をとることができなくなりますから。」

 年をとらないとわからない豊かさがある。病気をするからこそ、気づかされる世界がある。そんな、思い通りにならないからこそ知らされる世界を僕たちに教えてもらわないと、私たちは安心して年を重ねることができません。それに、若さってそんなにいいものですか。十〜二十代の頃の思慮の無さ、浅はかさ、傲慢さは、今から振り返ってみると恥ずかしいことばかり。もちろん、そんな時代を過ごしたのは私だけなのかもしれませんが。

 仏教では、「人生は苦である」といいます。その根っ子は「不如意(思い通りにならない)」であると。いつまでも若く元気でいたいという私の思いが、逆に私を苦しめていくのだというのです。自分の思いという小さな殻が破られた時に、自分を包み、支えて下さる無量なる世界に気づかされる。そんな世界と出遇われた先輩方の歩みが、私の生きる力となっています。■