2005(平成17)年4月号 



 四月八日は、お釈迦様の誕生日です。
 お釈迦様は、およそ二五〇〇年前、はるか遠くにヒマラヤの山々を望む、現在のネパールでお生まれになられました。お釈迦様は、誕生してすぐに「天にも地にも、ただ独りわたしとして尊いのである(天上天下唯我独尊)」とおっしゃったと伝えられています。

 この「天上天下唯我独尊」という言葉は、誤解されやすくて「この世の中で、俺だけが偉いんだ」などという、独善的な意味にとらええられている場合があります。だからマンガには、よく暴走族の兄ちゃんが、この言葉を刺繍した服を着て出てきます。

 でも、この言葉はそんな意味ではありません。
 私たちは他の誰とも決してかわることのできない人生を、それぞれに生きているのですが、同時に自分と他人を比べて、優越感や劣等感の中に生きています。そして他人に争い勝とうとして見栄や虚勢を張り、かえって生きる自信を見失ってしまうような迷った生き方をしているのではないでしょうか。
 お釈迦様は、裸のままの独りの私が、かけがえのない尊さをもって生まれている。その事実に気づいていく道を示されました。そのお示しがこの「ただ独りわたしとして尊い」という言葉なのです。