2006(平成18)年11月号 
 


 『行列のできる法律相談所』というテレビ番組があります。その出演者に橋下弁護士という方がおられます。この方、人はよさそうなのですが、おっちょこちょいなのか、失言が目立ちます。

 彼は『心理戦で絶対負けない交渉術 どんな相手も丸め込む48の極意』という本を書いているそうです。丸め込む極意を持っていて、それを自慢げに語る人を、皆さんは信用できますか。僕はとうてい信用できないのですが・・・。
 ところが、今本屋に行くと「どうすれば自分の意見を主張できるか」「どうすれば、相手を意のままに操れるか」といった本ばかりが、並んでいます。「どうすれば、相手の思いを汲み取ることができるか」といった本など、まず目にすることはありません。それだけ、主張する°Z術が求められている時代なのでしょう。

 しかし、皆が自分の思いを主張し合うばかりというのは、恐ろしいですよ。競いあい、騙しあい、丸め込もうとするばかりの世界はギスギスして、温もりや出遇いのよろこびなど、とても生まれそうにはありません。まさに現代社会を象徴しています。
ならば今こそ、主張する°Z術よりも、聞く°Z術、相手の思いを汲み取る技術が求められるのではないでしょうか。

 浄土真宗は、「聞」の宗教だと言われます。阿弥陀様の心を聞いていくのが、聴聞であると。
 阿弥陀様の心を通して、共に支えあいながら生きている他者≠フ心に耳を傾け、想像していく。それが、新しい出遇いのよろこびを開いていくのだと教えられるのです。■