2007(平成19 11月号) 
 
 
 
 
 

明治大学教授の齋藤孝さんは、「言われて嫌だった言葉を使わなくなるだけで、人間関係は格段に良くなる」と言っておられます。

特に最近のいじめは、お金をとりあげたり殴ったりというよりも、嫌がらせのような言葉が中心になっているようですし、言葉のいじめとは一瞬にして相手にダメージを与えるものでもあります。

 

子どもたちの間で言われて嫌だった言葉の代表選手は、「キモい(気持ち悪い)」「ウザい(うざったい)」だそうです。そして「臭い」はもう決定的。性格が嫌だといわれるよりも、ダメージがあるようです。(「臭い」という言葉は、もういじめを通り越していますね。差別に使われたという歴史もありますから。)

「キモい」「ウザい」は、最近急速にはやってきた言葉ですが、 今では若者は当たり前のように使っています。でもこの言葉は、本当に殺伐としていますね。

 

齋藤さんは、「人を傷つけるだけではなく、使う頻度がその人の心のすさみ具合を表す」とも指摘されます。

何より言う側の一方的な言葉ですから、言われる側は直しようもありませんし、「生理的に受けつけないと」か「煩わしいから自分の周りにまとわりつかないでくれ」といった、つまり「消えろ」という意味を含む、相手の存在を排除する危険な言葉なのです。

 

そんな言葉が日常的に使われている。言っている側が安易なだけに、傷つく側のダメージに思いがおよばない。本当に怖ろしいことだと思います。

 
 

ところで、今テレビでは小島よしおというお笑い芸人の「そんなの関係ねぇ!」というギャグがはやっています。うちの二歳の娘も真似をしているほどですから、年末恒例の流行語大賞受賞は確実でしょう。

世知辛い時代ですから、「そんなの関係ねぇ!」と言いたい気分は、誰しもあるでしょう。日々の仕事の中で、人間関係の中で、煩わしさのあまり「そんなの関係ねぇ!」と叫びたいときもあります。

それに、勝手な先入観で決めつけられた評価や、一人歩きした風評、偏見や迷信からくる決めつけなどには、「そんなの関係ねぇ!」と大きな声をあげなくてはならないとは思います。

しかし、「関係」とは、「つながり」であり「かかわり」であり「むすびつき」です。目には見えない「関係」が、今の私を成り立たせているのです。そこには、安易に切り捨てられないものがたくさんありますし、切り捨てることが自らを孤独の淵へと追いやることにもなるのです。安易な言葉が生み出す怖ろしさを、立ち止まって考えてみるべきでしょう。

 

「そんなの関係ねぇ!」という言葉は、本当に今の時代を象徴するような言葉だと思います。同時に、今の時代が失ったものを象徴する言葉だとも思うのです。