2008(平成20)年6月号  
 


 毎週金曜日夜7時から、日本テレビ系列で放送されている『ぐるぐるナインティナイン』というお笑い番組があります。高級レストランでメニューの値段を見ずに各自注文していき、自分が注文した料理の総額をあらかじめ設定された金額にいかに近づけられるかを競うコーナー「ゴチになります」が有名です。
 その番組で、「ミリオンブリッジ〜突破したら100万円〜」というコーナーが始まりました。プールの上高くに橋が架かっています。幅は40センチ。先へ進むほど細くなっていき、最後は10センチ。その橋をでんぐり返りをしながら、見事渡ることができたら100万円を手にすることができるという企画です。
 お笑い芸人さんが次々に挑戦しますが、なかなか渡りきることができません。しかし、プールの上に高く架かった細い橋は、その上に立つだけで怖いでしょうね。ましてやその橋の上で、でんぐり返りなんて、とんでもない。
 ただ、同じ幅でも床の上に書いた橋なら何とかその上ででんぐり返りできそうです。


 ある方が、こんな話を教えてくれました。自転車は、地面と接しているのはタイヤの幅約3センチだけ。でも、3センチの道を自転車で走ってみろと言われても、走れるものではない。3センチの道につらなる大地があるからこそ、安心して走ることができる。でも、私たちはその大地の広がりを見失い、3センチの道しか見ていないのではないかと。
 つまり、自分がお世話になっている人、好きな人、自分と接している人は大切に思えるけれども、それ以外の人はどうでもいい。関係ない。そんな狭い関係しか見えなくなっている時代ではないかと言われるのです。
 私が接している部分は小さいけれども、私を支えて下さる大地は、私の思いを越えてもっともっと広く大きいはず。その大地のように大きなつながりの中に生きている事実を見失ってしまうならば、プールの上に架かった橋の上で、おびえながら前に進んでいく人生にしかならないような気がします。


 さて、ミリオンブリッジを渡りきり、見事100万円を獲得する芸人は、一体誰でしょう。お笑い番組だから笑えるようなことですが、自分の人生をそんなふうにしか思えないならば、寂しいことだと思います。■