2012(平成24 12月号)  
 
 
 
 
 

毎年恒例となりました、日本漢字能力検定協会が主催する、今年一年の世相を表す漢字一字は「金」に選ばれました。ロンドン五輪の金メダルや、京都大学・山中教授のノーベル賞受賞など多くの「金字塔」が打ち立てられたこと、金環日食の観測もあり、また消費税や生活保護など金をめぐる問題が起こったことなども選定理由になったようです。

 では、私が個人的に選ぶ「今年を表す漢字一字」はというと、やはり「忙」という字になりそうです。たくさんの役職をいただいたこともありますが、何より心せわしい一年だったと言った方が正しいでしょう。いつも、何かに追われているような年でした。でも、それは私だけではなく、世の中全体が「忙しさ」に覆われているのではないでしょうか。
 実は、そんな私の生き方をあらわすような言葉が『大無量寿経』というお経にあるのです。

 「然るに世の人、薄俗にして共に不急の事を諍う」

 「世の人」とは世の中に生きる私たち、「薄俗」とは軽く薄っぺらということです。そして「不急の事」とは、急がなくてもいいことという意味だそうです。この世の中に生きる私たちは、急がなくてもいいことを我先に争いながら、ふと気がつけば心を震わせて感動することも、涙を流して悲しむことも、出遇いも、情熱も、生きているという手ごたえもない「軽く薄っぺらな人生」を過ごしているのではないのかという指摘です。『大無量寿経』という経典は、二千年以上も前に書かれたものですが、まさしく現代社会に生きる私の有りようというものをピタリと言い当てているようで、ドキッとさせられました。考えてみれば、「忙」という字はりっしん偏に亡くすと書きますから、「心を亡くす」と読めます。何か大切なものを見失いながら、心貧しい一年を過ごしてきたのかもしれません。

 来年こそは、大切なことを見失わず、心豊かな生き方をしたいものだと思うのですが、さて一体どうなることやら。しかし、そんな姿を知らされているだけでも、ものの見方、考え方、出遇い方は、大きく違ってくるような気がします。■