2015(平成27)年12月号  





いよいよ、今年も終わろうとしています。皆さんもそれぞれに、出遇いや別れ、喜びや悲しみ、心に残った出来事があったのではないでしょうか。ということで、今年最後の『オシエノカケラ』は、住職が独断で選びました「2015年心に残ったあのニュース」を発表したいと思います。


【大河ドラマ『花燃ゆ』放送!】

  今年は何といっても、大河ドラマ『花燃ゆ』です。ドラマの視聴率は伸び悩み、極楽寺とゆかりの深い楫取寿さん(主人公の姉)の存在感は最後まで薄いままでしたが、長門市村田清風記念館で開催された企画展の企画に携わり、講演依頼もあり、大型バスで極楽寺への参拝者がたくさん来られるなど、『花燃ゆ』効果でバタバタの一年になりました。何より、このご縁を通していろんな人との出遇いが広がり、良い経験をさせていただきました。



【五郎丸選手のあのポーズに注目!】

  ラグビーのワールドカップ日本代表の活躍は、凄かったですね。南アフリカ戦の勝利を決めたトライは、録画で見ても大興奮!五郎丸選手がペナルティキックを蹴る前に行うルーティーンは、一躍有名になりました。あのポーズは明らかに儀式・儀礼です。私たちの世代は「形よりも心だ」という考え方が一般的でした。ところが形をおろそかにすることで、大切な心がたくさん見失われてしまったような気がします。五郎丸選手から「形を整えることで、心が整えられる」ことがあるのだということを教えられました。考えてみれば、イチロー選手も体操の内村航平選手も、大相撲の力士も、みんな事前の儀式で心を整えています。
 形さえやっておけばそれでいいというわけではありませんが、形があるからこそ育てられ、形があるから迷ったときに立ち戻ることができ、形を通して伝わっていくのでしょう。宗教者として、儀式・儀礼の重要性を再確認させられた次第です。

 

【マンションが傾いた?!】

横浜市のマンションが傾くという事件が起こりました。強固な地盤に打ち込まなくてはならない杭を、データの改ざんで誤魔化したことがその原因。住民の方々は、怒りと不安な思いの中で、今なお暮らしておられることでしょう。
  しかし、この事件。住民の方には失礼になるかもしれませんが、起こるべくして起こったように思えます。近頃は、目には見えない部分を、粗末に扱う時代です。「縁の下の力持ち」という言葉は死語となり、見えないところで支えて下さる方を敬うことなどなくなりました。「人を殺したのは、目立ちたかったから」という若者が出てくるのですから、見える部分、目立つところばかりが大切にされているということなのでしょう。その上、速さ、安さばかりが求められるのですから、見えない部分が手抜きになるはずです。
 お念仏に育てられ、生涯を幼児教育に捧げられた東井義雄先生は、

「見えないところがほんものにならないと、
           見えるところもほんものにならない」

と言われています。この事件を通して、私たちは大切にすべきものは何かを学ばなくてはなりません。

 

【日本はどうなっているの?】

オウム真理教の事件や9.11同時多発テロ以降、宗教への信頼が大きく揺らぎました。「どうして宗教が人を殺すのか」「宗教が戦争をすすめてどうする!」「究極のところ、宗教は世界平和を求めるものではないのか」と。今年もパリを始め世界各地で、「神の名のもとに」と大規模なテロが起き、たくさんの方が亡くなられました。「人を殺す理由に、私たちの神を使わないでくれ。」と、イスラム教を信仰しておられる方の多くは、思われているのではないでしょうか。
  ところが今の日本では、宗教者が平和を語りづらい時代になっているような気がしてなりません。宗教者が平和を語れない世の中って、逆にどうなのでしょう。おかしくありませんか?
  宗教者の端くれとして、今こそ堂々と平和を語っていかねばならないと思うことです。

 

  さてさて、いろんなことがあった一年でした。皆様には、様々なご迷惑をおかけしました。本当に、有難うございました。来年は一体どんな年になるのやら。今年の反省を踏まえながら、より良い一年にしたいものです。■