2010(平成22)年12月   




 ある外国の博覧会。人気のパビリオンには待ち時間の長い行列ができ、たくさんの人たちが待ちくたびれています。
 ところがあるパビリオンだけは、長い待ち時間に飽きる頃、何故かみんな振り返り、にこやかな笑顔になるのです。
 なぜならそこは入口が二階にあり、最後には階段を上る作りになっていて、そこから振り返ると、今まで並んでいた列が、実は動物の一筆書きの画になっていたことに気づくのです。
 並んでいる間は退屈な行列だったのが、少し距離をもって見下ろすと、自分自身が楽しい展示の一部になっていたことが知らされる。視点が変わったことで、先を行く人たちの笑顔の秘密がわかり、とても楽しくなる。思い浮かべるだけでも、にこやかな笑顔が想像できるようです。
 
 
私たちは「過去は変えることはできない」と思いがちですが、視点が変われば過去も変わります。いえ、過去は見直すことができるのです。

 今年も、色んなことがありました。うれしいことや、忘れたいような嫌なことも。しかし、視点が変われば、忘れたい過去も大切な経験となり、見落としていた大切なことに気づくことができるかもしれません。新しい年を迎えるにあたり、未来ばかりに目も行きがちになりますが、過去を見直すことができるような豊かな視点を育てる一年にしたいものだと思います。■