2010(平成22)年4月   



 季節の変わり目は天候が不安定ですが、今年ほど極端な年は、そうはありませんね。暖かな日が続くかと思うと、驚くような冷え込みが訪れ、とんでもない大雪さえ降りました。春一番はとうにやってきたはずなのに、三番も四番と言わんばかりの強風が吹き荒れる。暖かで、穏やかな陽が来るのが待ち遠しかったのは、私だけではないのでは。

やはり、寒さにふるえた経験が、太陽の暖かさの喜びを深くするのでしょう。それは、人生においても同じことなのかもしれません。悩みや、苦しみ、人間の弱さを知るからこそ、生命がいかに大きな力に支えられているか、その尊さと温もりを知るのだと教えられます。

解剖学者の養老孟司さんは、昔の人たちは、「人生、思い通りにならないことが当たり前」だと思っていたが、現代人は「思い通りになることが当たり前」だと思っていると言われています。電車が一分遅れたことで大きなニュースになる時代ですから、それだけ思い通りで快適・便利が当たり前になり、待てず、許せない時代だと言えるでしょう。

しかし逆に考えると、待ってもらえない、許してもらえない中で生きるというのは、本当にしんどいことです。「思い通りにならない人生」であることを、悩みや悲しみを通して深く味わうからこそ、優しさも寛容の心も生まれてくるのではないでしょうか。

 

仏教では、人生の苦しみの根っこを「不如意(思い通りにならない)」だといいます。それは、「思い通り」になれば解決するものではなく、その事実を受け止めることからしか始まらないことを、教えて下さるのです。■