2010(平成22)年8月   

原田大助さんには、知的障害があります。それは現代社会においては、大きなハンディだと見られています。ところが原田さんの言葉には、私のような者が振り回す、小賢しい理屈を根底からひっくり返すような重みがあり、真実があります。

 世の中、いろんな理屈がある。その理屈が時に戦争や差別を起こし、それを正当化しようとする。しかし、理屈をつければつけるほど、何か本当に願うべきことが、求めていることが見失われていくのです。


 親鸞聖人は、「よしあしの文字をもしらぬひとはみな まことのこころなりけるを 善悪の字しりがほは おほそらごとのかたちなり」と言われています。善悪を知り抜いたかのように理屈を振り回すあり方は、人間をますます傲慢にさせ、いのちの事実を見失わせる。知識はなくとも、そのいのちの事実に生きている人こそ、まことの心の人なのだと。

 理屈を振り回し、理屈に振り回された「おほそらごと」の生き方をしているにも関わらず、そのことに気付くこともない私の姿を、原田さんの言葉は鋭く教えて下さるのです。■