2010(平成22)年9月   





今年の夏は、本当に暑かったですね。酷暑という言葉がピッタリでした。
 そんな中、熱中症で倒れる方だけではなく、亡くなられた方さえありました。しかも、家の中で倒れる人も多かったようです。どうして家の中で?と驚きますが、最近の家は気密性が高く、外気を遮断し、内部の暖房・冷房を逃さない造りになっています。快適さを求めてのことなのでしょうが、それが裏目に出て、中に籠った熱の逃げ場がなくなってしまったのです。

 聞くところによると、昔の家は自然の風が入る方向を考えて、造られていたとのこと。自然に振り回される一方、自然の恵みを受けて生きてこられたということなのでしょう。
 ところが、思い通りになるようにと、自然を遮断することで、このようなことが起こってしまいました。

 

今年の一月、NHKで『無縁社会』と題された番組が放送され、大きな反響を呼びました。これまで生きる上での支えとなっていた、地縁・血縁・社縁というものを鬱陶しいからと切り捨てて、都合の良い人とだけ関係を結び、自分の世界に閉じこもる人が増えた時代。快適さと引き替えに、支えを失い、孤独の中に死んでいく人が何万人もいるそうです。

それだけでは、ありません。自分の思いという世界では、自身がその思いに適わなくなったとき、今度は自らを蔑み、傷つけてしまうことさえ起こっています。逃げ場がないだけに、深刻なことになりかねません。


親鸞聖人は、「自分の思いというちいさな世界から、一歩踏み出して、私を包む大きな世界(阿弥陀=無量なる世界)に出遇って下さい」と呼びかけられています。

空に浮かんでいる浮雲を見つめるように。

身体全体を通して自然の風を感じるように。

そんな時「あぁ、人間って、ちいさいなぁ。」と思いませんか。ちっぽけなこだわりや傲慢さに気付かされるのではないでしょうか。同時に、大きな繋がりの中に生かされているという、人間の事実に立ち戻らせて下さるのです。そんな生き方を「他力」の生活と言うのだと教えられました。■