2011(平成23)年12月   




今年も、もうすぐ終わりです。皆さんにとって、この一年はどんな年だったでしょうか。うれしいこと、楽しいこと、悲しいこと、苦しいこと。いろんなことが、それぞれあったことでしょう。でも、「ありがとう」「生まれてきてよかった」と思えるような一年を過ごすことができたのであれば、それは本当に素晴らしい年だと思います。また、そうでない方も、悲しみ、苦しみが後の糧になれば、それはまた素晴らしい年だと振り返ることができるのではないでしょうか。

近頃、「昔はみんな貧乏だったけど、今よりずっと幸せだったような気がします」という声をよく聞きます。確かに、昔よりも物質的には豊かになりましたが、どうも世知辛く、殺伐とした世の中が広がっているような気がします。確かに、昔よりもよくなったことはたくさんあります。でも、貧しかったからこそ、助け合わなくてはならなかったし、だからこそ、人間関係にも広がりと深さがありました。「ありがとう」と感謝し、感謝され、いろんな人との出遇いの中で「生まれてきてよかった」と実感する場面もたくさんあったことでしょう。
  だからといって、昔に戻ることはできません。しかし、心の眼を育てていくならば、「ありがとう」「生まれてきてよかった」と感じる場面は、まだまだたくさん見つかるはずです。その心の眼を育てて下さるのが仏法だと、教えられるのです。

 この言葉は、何も死ぬ前のことを考えようということではありません。死という大きな区切りを通して、今「ありがとう」「生まれてきてよかった」と言える人生を送っているのかが問われるのです。私たちは、何かの区切りがなくては、今を見つめることなど、なかなかできません。
 一年を振り返るこの年末という区切りに、仏様の光に照らされて、自分の生き方を見つめ直してみたいと思います。■