2011(平成23)年6月   




 この言葉は、東井義雄先生の「ご説法」という詩の一節を、短くまとめたものです。人生は、晴れの日ばかりではありません。雨の日もあれば、嵐の日もある。思いもしないほどの苦難が、押し寄せる場合もあります。しかし、そんな中だからこそ、気づかされる大切なことがある。それを、阿弥陀様のご説法と受け止め、味わう生き方が、人生を深く、豊かにいただくことだと教えられるのです。

 

お参りに行くと、やはりお年寄りの方が多いのですが、よく聞くのが「歳をとったらつまらんですねぇ」という言葉です。確かに、歳をとったら、若い時ほど動けませんし、不便ではあるでしょう。
 でも、僕はいつも言うんです。
「そんなこと言っちゃダメですよ。そんなことを言ったら・・・、
 僕たちが安心して歳をとることができないじゃないですか。
 歳をとるからこそ、気づかされることがある。
 病気をするからこそ、わかることがある。
 そういうことを、もっとたくさん僕たち若い者に教えて下さいよ。」
 

元気がよくて、動ける身体のうちは良くて、そうでなかったらつまらないのであれば、私たちには哀れな未来しかありません。それはあまりにも傲慢で、情けない生き方ではないでしょうか。病の中から、老いの中から豊かな生き方を示して下さる方があるからこそ、私たちは安心して、歳をとることができるのです。

 東井義雄先生の詩には、このような続きがあります。
 
   お天気の日にも健康な日にも 大切なご説法があるのだが
  そういう恵まれた日には
  /こちらの側に雑音がありすぎてどうも 聞きとりにくい

 若さがあるからこそ、健康だからこそ、得られるものはたくさんあります。しかし、若さや健康を誇ることで見えなくなる大切なことを、様々なご縁を通して深く味わう。そんな身に育てられるのが、お念仏の世界です。■