2011(平成23)年7月
山口新聞『東流西流





 私のお寺では、月に一度子ども会をしています。先日、子どもたちにこんな質問をしました。「上の反対は…下、右の反対は…左。それでは問題です。《ありがとう》の反対は何でしょう。」皆さんも考えてみて下さい。ヒントは、《ありがとう》を漢字で書くと…、《有難う》ですね。つまり、有ることが難しいことが、今ここに有るという意味です。ということは、《ありがとう》の反対は、有ることが簡単、即ち「当たり前」ということになります。
 いくらたくさんのものを貰っても、高価なものであっても、「当たり前」と受け取れば、うれしくも何ともありません。しかし、どんなに安いものであっても、贈って下さった方の苦労や想いを深く受け止めたときには、「有ることが難しいことはが、今ここにあるのだ」と、《有難う》といただくことができるのではないでしょうか。

 仏教には「ウザイガキ」という言葉があります。勿論近頃の若者言葉とは違いますよ。漢字で書くと「有財餓鬼」。無くて欲しがるのではなく、たくさんの財に囲まれながら、なお満たされることなく欲しがる生き方をいいます。まさしく、現代社会に生きる私たちの姿を言い当てられたようで、ドキッとさせられます。

 人生の豊かさとは、一体何なのでしょう。心満たされるとは、一体どういうことなのでしょう。足を止めて、共に考えてみませんか。■