昨年、映画監督黒澤明さんの直筆ノートが公開されました。約三十年前に綴られたノートには、原爆、原発を推し進めている人々に対し「自分達の手に負えないとは考えないらしい」「人間は間違いばかり起こしているのに」と謙虚さをなくした姿が指摘され、こう続きます。
「高い木に登って、自分のまたがってる木の枝を一生懸命切っている阿呆に似ている」と。

 実は私、この言葉が自分に向けられているようでギクリとしたのです。原子力の問題だけではありません。どんな恵みの中にいるのか。どんなはたらきに支えられ、生かされているのか。実感していないどころか、感謝の気持ちも、大切にしようとする営みも全くなく、当たり前のように享受しているのではないか。そんな自分に、冷や汗が出ました。「求められるのは経済回復よりも、人間回復ではないのか。お前は、何を求めているのか。」そう問われたような気さえしました。
 とりあえずは、「またがっている木の枝を切ろうとしている阿呆」だと自覚するところから、始めようと思います。今年もよろしくお願いします。■