ミヒャエル・エンデの児童文学作品『モモ』に、道路掃除夫のベッポじいさんという人物が登場します。彼の考えは「世の中の不幸というものは、すべて嘘をつくことから生まれている、それもわざとついた嘘ばかりではない。せっかちすぎたり、正しくものを見きわめずにうっかり口にしたりする嘘のせいなのだ」というものです。確かに、性急に結果を求める思いや、目先のことに捉われた言葉に振り回されて、不安や不幸な気持ちに落ち込んでしまうのが私たちではないでしょうか。
 ベッポじいさんは、こうも言っています。とても長い道路掃除をする時には、せかせかと働き、スピードをあげてはいけない。一度に道路ぜんぶのことを考えてしまうと、心配ばかりが増し、しまいには息が切れて動けなくなってしまう。つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考える。すると、気がついた時には、すべて掃除は終わっているのだと。

 先が見えないコロナ禍で、不安な生活が続きます。だからこそ、阿弥陀様に相談しながら一歩一歩を大切に、一日一日を丁寧に生きていく。そんな一年にしたいと思います。今年もよろしくお願いします。■