2025.3.6


正面階段の門柱に 墨を入れました












極楽寺の本堂正面階段に、門柱があります。実はこの門柱に、字が彫られていることをご存知でしょうか。
 せっかく彫られているのに、すっかり色が落ちてしまい、このままでは何が書かれているか見えません。前々から、何とかしたいと考えていたのですが、ネットで調べて「墓石ペイント」なるお墓の文字の補修塗料が売られていることを発見!早速購入し、墨を入れました。
 この門柱は、昭和二十三年十二月に建てられたものです。私の祖父である第二十一代住職大融の代のこと。施主は、野波瀬の宮崎治郎さん、宮崎憲治さん、宮崎茂之さんです。

 


   



また、正面向かって右側には「唯能常称如来号」と、左側には「応報大悲弘誓恩」という言葉が彫られています。これは、親鸞聖人が書かれた『正信偈』にある御文です。赤い勤行聖典(本願寺出版社発行)の20ページに出てきます。ちなみに、勤行聖典の下の段には意訳として「ただよくつねに み名となえ」「ふかきめぐみに こたえかし」とあります。
つまり、「唯能常称如来号 応報大悲弘誓恩」とは、「南無阿弥陀仏のお念仏を、常に称えましょう。そして、深い恵みとご恩にこたえていきましょう」という意味なのです。


 
 



もう少し丁寧に説明します。親鸞聖人は「お念仏は、私が称えるものではあるけれども、阿弥陀さまからの呼び声と受け止めなさい」と教えてくださいました。私の口から出てくるお念仏は、阿弥陀さまの呼び声であり、願いとはたらきが込められている。まさに、声の仏さまとして阿弥陀さまが私の口から現れてくださっているのだと。

 このイメージのビジュアル表現として思い起こされるのが、六波羅蜜寺の空也上人像(重要文化財)です。口から、六体の仏さまが現れていることで有名なこのお像。この六体は南無阿弥陀仏の六字を表していて、称えた六字がそのまま阿弥陀さまに具現化されているのです。

 このように、お念仏を称える時、阿弥陀さまの存在をリアルに感じた人がおられたのです。阿弥陀さまが、いつも私のそばにいてくださる。私の存在を丸ごと認めてくださる。一人であっても独りではない。生きているときも、死を迎えても、どんな時もみ手の真ん中に抱きとられている。

 その温もりを実感しながら、阿弥陀さまの心をいただき、応えようと人生を歩まれた方々がおられた。その歴史が刻まれた場所が、お寺なのです。

 







皆さんが門柱を見る度に、先輩方の歩みを思い起こされ、お念仏を称えていただくと、祖父大融も、施主の方々も喜ばれるのではないかと思います。
 
 ただし門柱には、あまり近づきすぎないようにしてください。素人仕事が、バレてしまうので(笑)■