耕すご縁として
 
 2012(平成24)年




「お取越し」とは、真宗寺院において最も大切な行事である親鸞聖人のご法事「報恩講」を、ご命日よりも取越して、各家々でめるという門徒にとって大切な伝統行事です。ところが近頃は、「どうして先祖でもない人の法事を、勤めなくてはならないのか!」と怒られそうな時代になりました。しかし、親鸞聖人が亡くなられてから今年で七百五十年。長い歴史を通して、「伝えなくてはならない願いがある」「受け止めなくてはならない尊いご恩がある」と私たちのご先祖や先輩方が、その心を「お取越し」という行事にめられて、私たちのところにまで届けて下さっているのです。


 実
りの秋をえましたが、畑もすことで豊かな作物が育つように、心も深く耕さなくては、豊かな心は育ちません。しかし、私たちの生きる現代社会は、目先の楽しみや面白さばかりを追い求める、っぺらな世の中になってはいないでしょうか。
 
 長い
歴史を通して、私にけられている願いを深く受け止めること。それが足下を掘り下げ、心を耕すことにつながるのではないでしょうか。そこにこそ、心豊かな人生が開かれていくのだと教えられるのです。■