2019(令和元)年8月


 

❏ 最近、北方謙三の歴史小説を読み直しています。ハードボイルド小説で一時代を築いた北方は、南北朝時代の九州を舞台にした『武王の門』で、初の歴史小説を発表。元々歴史小説好きだった私ですが、この作品でどっぷりとハマり、以来20年読み続けております。その後、舞台を中国に移し、『三国志』(全13巻)『水滸伝』シリーズ(『楊令伝』『岳飛伝』を含め全51巻!)などの大作が発表されますが、これらもモチロン全部読んでいます。❏ 北方作品に共通するテーマは、「夢に生きる男の生き様」。しかし最後には、皆滅びを迎えます。夢をかなえるという結果よりも、夢を追う闘いという経過そのものが、北方にとっては「男の生き様」なのでしょう。また、登場人物が魅力的で、かつ多面的。豪傑の持つ弱さや、臆病であるが故の緻密さ。複雑だからこそ人間は豊かなのだということを教えられました。それも北方の、人間への深いまなざしがあるからなのだと思います。今考えると、かなり大きな影響を与えられていた気がします。❏ 中でもお気に入りの登場人物は、『三国志』の張飛。乱暴者と伝えられる彼も、北方作品では一味違います。繊細で心優しいからこそ、あえて汚れ役を引き受ける魅力的な人物に描かれています。❏ 北方ファンがおられたら、ぜひ声をかけてください。熱く語り合いたいものです。■





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